「天ノ少女」感想
今年も大晦日を迎え、自分にとっては素晴らしいおうちライフを過ごせた一年でした。今回はクリスマスに発売された「
「殻ノ少女」3部作とは
「
戦後まもなく、昭和31年の東京で、ある事件をきっかけに警官を辞め探偵を始めた主人公時坂玲人が、一人の少女と出会います。
捜して欲しいんだ。――私を。本当の、ね
その依頼を出した少女の名は、朽木冬子。そしてこの出会いと同時期に発生した連続少女殺人事件が、連綿と紡がれてきた様々な人の
虚ノ少女、天ノ少女は殻ノ少女の2年後を舞台に、さらなる登場人物を交えながら謎に迫っていきます。
以降天ノ少女ネタバレ有り感想
ということで、天ノ少女TRUE ENDにたどり着いたので、感想をつらつらと述べていきたいな、と思います。解説はしないので本編やってね。
TRUE END
最初に言いたいのは、TRUE ENDよかった...ということです。
捜して欲しいんだ。――私を。本当の、ね
このシリーズはこの台詞から始まり、この台詞に終わります。戦後まもなくで混乱する社会で、真崎さんや前園さん、葛城シンのように自分のルーツを隠しておきたいもの、自分のルーツを嫌うものが多く登場します。そんな中に会って自分はどこに立っているのかを知りたいという欲求はなんだか一層綺麗なものに思えました。
そもそも登場人物のほとんどにとって過去は忌むべきものであり、現在まで絡みついて離れない偏執の対象になっています。過去を知りたい、向き合ってみたい。そんな偏執のない純粋な気持ちは冬子と色羽くらいしかもっていんですね。
章題にあるとおり、至高の高みにあるエンドでした。坂を駆けながら流れる瑠璃の鳥の瞬間にないてしまうんだなぁ。そして振り向きCGよ...
GRAND END
魚住-杏子の結婚式で終わるこのエンドも大好きです。というか物語はエピローグが長ければ長いほどすき(エピローグ40分だった王の帰還とか)なので、幸せな気持ちでエンターキー押せる時間は至福でした。あと墓前シーンのある作品に悪い作品はない。これは間違いないです。
批評的なアレ
シリーズファンとしては最高の最終作としてプレイできました。
好きな点ははっきりしていて、普通に事件が面白くてキャラが魅力的だからです。新たな事件、新たな犯人が前作からの偏執に関わり、複雑化していく過程は見ていて堪えるがドーパミンも出っぱなしのようなよくわからない感覚に襲われました。前2作に関わってくるだけでうれしくなっちゃうんですよね。
天罰事件は過程から終わりまで楽しめました、出てくる死体の数々と見えない犯人が何を示すのか、そして最初の被害者は?動機は? 上手く乗せられたなって感じでした。
反対に不満点はもやっとしていてまとまっていないです。
いくつか書くと、まず1つ目は天罰事件の6年後、つまり第5章火星天以降の事件の突飛さが挙げられます。事件としては狂人の娘のために遊び相手をさらってきて、不要になった少女を天罰事件に見立てて殺す、という事件なわけですが、殻ノ少女、虚ノ少女のすべての事件と比べても物語に存在している必要性が薄い気がしてなりません。虚ノ少女の各事件は雛形出身の真崎と綿密に絡み合っていて、一つ一つを楽しめたわけですが、この事件は本当に関わりが薄いんですよね。犯人描写の濃さも全然足りていないですし。虚ノ少女はその膨大なボリュームで書ききったわけですが、天ノ少女はその辺り話の筋は書けていてもディテールが足りない。
2つ目はキャラの不憫度合いについてなので、下でまとめて...
各キャラクターについてのざっくりコメント
・時坂玲人
カルタグラの誰かと違ってきっちり主人公が推理してくれてうれしいです。周りの人たちは偏執を振り切ってきちんと前を向いていく各エンドのなかで、それを温かく見守りながらも自分は空虚を埋められず、そっとステラとともに生きる(ただし結婚はしない)という姿が物哀しいけど玲人さんらしくてよかったなと思います。偏執から救われることを諦めているが、狂気や不幸に苛まれるわけではないのが複雑です。
・時坂 紫
最後まで強い女性として走り続けていましたね。過去2作に比べて落ち着いた印象になって一層魅力的に見えました。玲人の家に帰ってきたときにステラと会ってちょっと哀しくなるシーンがとっても印象的でした。絶対に真崎と付き合うのは不良物件だからやめてほしい。
・真崎 智之
今作の不満点その2-1、真崎さん影薄い問題。登場シーンは多いし推理もするし重要な場面にもきっちり顔を出す主要キャラではありますが、肝心の本人の偏執に全く向き合わないまま本編が終わってしまいました。触れようとした痕跡はあったけれどそのボリュームと内容では何もないのと一緒!
冬見さんとの終わった関係、未散との掛け合いや、紫さんとのちょっぴり近い関係性など好きなシーンも掘り下げるネタも多い良いキャラでした。
・佐藤歩
貴重な櫻羽女学院学生枠。他はみんな死んでしまった... 選択肢次第では昭和33年でもちょいちょい絡みがあるのがいい。警官礼装かっこいいぞ~
・朽木千鶴
1作目で抱いた違和感が2作目で表面化したのが懐かしい。結局その偏執は3作目でも変わらず続いていましたね。
・朽木文弥
実行力のないやべーやつに機会を与えると大変なことになるという実例。冬子さんへの偏執はホンモノでした。偏執エンドは必見。
・六識 命
作中ですべてを手に入れたおっさん。終わってからいろいろ考えてみるとやることやって(前園さん製とはいえ)美砂にもまた会えて一番幸せに終わりを迎えたのでは?最後までクッソ迷惑だけど語りは上手いので操られちゃう♪って感じの悪役。いや玲人さんからすればもう悪役ではない。
・黒矢 尚織
今作の不満点2-2。お前と真崎の関係性が必要だっただろ!!なんだあの5分くらいのアフターシナリオみたいな絡みは!!
前作で大立ち回りをしたのに今作ではチラ見せ程度というのがほんとどうして...という感じです。殻でばらまいた部分は回収しきったのに、虚の雛形集落の部分はかなり投げっぱなし感が強くて悲しいです。
ただ5分くらいの登場で本人の擦り切れた感じというか達観したオーラは感じとれてよかったかな...
・葉月杏子
日常側の象徴たる喫茶店「月世界」店主。殻では冬子との、虚では雪子とのどこかしっとりしたやりとりが良かった...今回は全く月世界通いの主要キャラが増えず減る一方だったのが悲しい。
・魚住 夾三
偏執のない側の人間だが、それゆえに影が(自分の中では)薄い人。幸せになってください。いや、欠落がない人からは物語が始まらないのだ...
・蒼木 冬史
カルタグラから皆勤賞の数少ない方。劇中では何も失わないが、喪ってきたものは大きい。カルタグラで見せた女性的な部分が好きすぎるんだよな。
・八木沼 了一
こちらもカルタグラから皆勤賞。今までで一番動いてたんじゃないか?今まで示唆されてきた偏執が垣間見られて、1週目強制BADがあって...人間らしくて好きでした。
・マリス・ステラ
かなり主人公周りとは距離のあるキャラだと思っていたらめちゃくちゃ関係が深く、最終章になってぐいぐい主張してきた方。でも確かに玲人の欠落に寄り添うには紫ではだめで、他人だけど他人じゃない距離の人が必要なんだろうな、と思うのも事実。
・茅原 冬美
いろいろ振り切って、割り切って生きられるようになった人。前作からいいキャラしてたのでもっと出て欲しかったな...真崎いじりを無限にしていて欲しい。終わった恋はあるけれど、もう恋は終わっているけれど、今の未散と雪子と3人での暮らしが大事なんだろうなというのが見えて嬉しい。虚またやりたいな...
・茅原 雪子
今回の不満点2-3。今まであまり見なかったタイプの殺人鬼だったうえにいろいろ可愛すぎるのでもっと見たかった... もちろんGrand EndのCGは最高ではあったわけですが、シナリオもうちょっと欲しかったわけで...かわいいCGもっとください。
・前園 静
人間の心もあるのに芸術との境界を見失ったお方。いやでも家庭環境的にしょうがないか...笹倉以外の大人に出会っていたらまた違ったんだろうか。千絵さんとの百合シーン結構好き。もっと描いて?
若女将とか千絵さんとかはいまだに測りかねているところもあるなぁと思った次第。とにかく不満な点としては雪子と沢城さんもっと出して?と、真崎さんと虚ノ少女にもっと向き合って?というところでした。話の本筋が完璧だったがためにこういうとこに粗がある...と思ってしまうのは贅沢かなぁ。
また殻やりたいな、虚もいいな、いや特典小説読まなきゃ...